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zoom RSS 考察:日本国憲法と国民投票法案

<<   作成日時 : 2007/03/11 23:33   >>

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政府・与党はいわゆる「国民投票法案」を「日本国憲法施行60周年」に合わせて今年(2007)の5月3日までに成立させたいとしている。提出されている法案の正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律案」(与党案)、「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」(民主党案)である。民主党案に一般国民投票を含めてはいるが、いずれも現憲法を改定することを目的にしている。

これは「日本国憲法第96条」(下記の条文)の制約に基づくものである。
〔憲法改正の発議、国民投票及び公布〕
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


ではどのように憲法を改正したいというのか。いくつかの条文に対する変更も掲げてはいるがここでは最大の焦点である第9条に絞って見てみよう。
先ず最初に現憲法を記し、その後に自民党と民主党の変更点を見る。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(前文以下略) 
第二章 戦争の放棄
第九条【戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認】
1、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


では、自民党の「新憲法草案」(2005.10.28)ではどのように変更しようとしているのか。
先ず、第二章の標題が、「戦争の放棄」から「安全保障」へと変わり、2項を全面削除することにより、「戦争をしない」から「戦争もやむを得ない」という方向に大きく変えている。特に第九条の二、3項によって「軍による統制」と「海外派兵」への道を開いている。それらの具体的条文は以下の通りです。

第二章 安全保障
第九条(平和主義)  (1項は現行通り。)
(2項は現行条文を削除し、新たに第九条の二を新設する。)
第九条の二(自衛軍)  我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。
 2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
 3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
 4 前二項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。


次に民主党の変更点だが、「憲法提言」(2005.10.31)によると、@国際法の枠組みに対応したより厳格な「制約された自衛権」を明確にすること。A国際貢献のための枠組みをより確かなものにすること。を求めている。これによって現状の国連多国籍軍の活動や国連平和維持活動(PKO)への参加をスムースにすることができるとしている。

いずれも、自衛隊を正式に「戦力」として憲法で認めることと、自衛隊が海外で活動することを憲法で保証しようとするものである。
その先取りとしてすでに自衛隊の海外での活動を「本来任務」としたり、防衛庁を「省」に昇格させる等の法律の改定をしている。
既成事実の積み重ねで日本は憲法をここまで突き崩してきた。
郵政選挙で獲得した置き土産の議席と現今の乗り気な民主党の議席を合わせれば発議に十分な状況がある今を措いて他にはないというのが自民党推進派の本音である。
さあ、いよいよ本丸に手を着けようというのである。

日本国民はここで一度立ち止まって、日本の来し方在り方等を冷静に考えて見る必要があるのではないだろうか。「日本国憲法」は押し付けられたという人があるが、国民はどういう憲法を求めていたのか。少し調べれば分かることだが、この「日本国憲法」の根本理念は国民の要望だったのである。むしろ押し付けられた(指令された)のは今日の自衛隊の前身である警察予備隊の設置だったのである(1950.8.10)。これは中華人民共和国の成立(1949.10.1)と朝鮮戦争の勃発(1950.6.25)を機にアメリカは日本を反共の防波堤にするべく占領政策の変更を行ったのである。

当初のアメリカの占領政策は、戦力の解体のための軍部と財閥の解体であり日本の民主化に力点があった。そのための施策はいろいろに行われ、「教育基本法」や「日本国憲法」もその一つといえるかも知れない。しかしそこにも日本の「統治」のための旧支配層との妥協があった。「天皇」の存続と引換えに沖縄をアメリカの軍事基地にしたのもその一つだった。また、アメリカの統治方針は当初から「反共」ではあったが、日本の具体的な統治政策という点では内部に若干の意見の相違があったようである。

いずれにしても、48年12月には岸信介(安倍首相の祖父)をはじめとするA級戦犯容疑者が釈放になり、旧支配層が復活してくる。その岸信介は57年に岸内閣を組織する。このように、天皇の戦争責任の免責を含め日本は過去の戦争責任についてきちんと検証せずに今日に至っているのである。中朝との摩擦がこんなところにあることを理解しておく必要がある。

一方、国民は朝鮮戦争の特需とそれに続く高度経済成長の波に乗り遅れまいとする競争のシステムに投げ込まれる(モーレツ社員、偏差値教育)。憲法を改定したいとする一部の人の中には「公共心」がないのは教育基本法や憲法の所為だとする論があるがそれはむしろ逆に憲法や教育基本法を尊重せずこのような社会の後押しをしてきたことにこそその原因を求めなければならないだろう。若者は歴史を知らない(特に現代史)と言われるが、「現代史」を知らないのは実は本人の問題ではなく旧文部省の意識的な政策であったことが明らかになった。NHKテレビの討論番組で元文部大臣の町村信孝氏は、毎年「現代史」に入る前に時間切れになるのはそのように学習指導方針が出来ているのだと告白した。そこを教えないのは「偏向教師」がいるからだと教師の責任にしているが自らの検定教科書まで無視しようとしているのである。

「日本国憲法」は世界的に見ても貴重な存在である。第1章の「天皇」条項を除けば人類の理想的規範である。日本国民がこの理想的規範の水準に到達していないからといってわざわざ後退させる愚もないだろう。むしろ国政は、この水準に到達させるべく教育をはじめ社会の隅々までにこの理念を浸透させようと努力することがその本来の役割であろう。

民主党や世論が「改憲」に傾きはじめたのは湾岸戦争で130億ドルの拠出をしながらあまり評価されなかった(実はほとんどがアメリカの手に渡りクウェートにはほんの僅かしか届いていなかったという証言がある)との思いがトラウマのように残っているところにアメリカの同時多発テロ後アーミテージ国務副長官が日本に「顔の見える貢献をせよ(ショー・ザ・フラッグ!)」と要求したことにある。しかしそれはアメリカの一部のタカ派の要求であり国際的な意見を代表するものでは全くないのである。むしろ世界の潮流としては、憲法九条のもとに高い経済力を備えた日本に、武器に依らない平和貢献を期待しているのである。日本という国を一度外から見てみるとよい。日本という国がわざわざ「戦争放棄」を廃棄して軍事大国になることをどこの国が望んでいるのだろうか。今、日本がすべきことは世界の国々から信頼される国になることではないのか。それこそがいま望まれている「普通の国」になることであり「美しい国」になることではないか。軍艦のプラモデルを作って楽しんでいた政治家などの危機意識に煽られて憲法を改定するなど愚の骨頂である。これからの国民は名実ともに日本が日本国憲法に則り国政を運営されるよう政府に要求していくことこそが求められているのではないだろうか。

さて、「国民投票法案」ですが、これは冒頭で述べましたように、現憲法を改定しようとするものです。ですから改定しようとしなければ本来必要のないものです。民主党はいつでも一般国民投票が出来るように準備して置くのだと言っていますが、具体的な対象案件があるわけではないのです。つまり、今は憲法改定だけが対象になる訳です。このことを踏まえた上で法案を見てみましょう。
それぞれの法案の中味(要綱)については該当法案をクリックしてもらえれば分かります。
与党案
民主党案

法案を検討する上で日本弁護士連合会の意見書は参考になります。参照してみて下さい。

私がこの法案について一点だけ申し上げるとすれば、この法案にとって一番大切なことは、国の根本理念を変更するにふさわしい、つまり国民の意思を正確に反映するものになっているかどうかではないかと思っています。そういう点から見ますと与党案では白票は「無効票」になってしまいますが、白票の中には「部分的に反対、部分的に賛成」とか「分からない」さらには「棄権」の意思表示の場合さえもあります。国民の過半数が改定を望んでいると判断するには慎重な手続を踏む必要があります。ですから「賛成」という意思表示は「有効投票総数」ではなく「投票総数」でなければならないとする民主党案の方が、「反対」は「無記」でよいとする記載方法を含め、まだしも良いのではないかと思います。

以上で日本国憲法と国民投票法案の考察を終わります。最後の方と途中の1,2箇所で語調を変えていますが気持優先の気ままな文章だとお笑い下さい。ではまた。



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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
コメントしようと思いましたが、止めます。僕は大賛成派ですが・・・
とおりすがり
2007/03/12 00:57
TBありがとうございました。ふざけた記事ですが、TB返しさせて頂きます。
dr.stonefly
2007/03/12 18:02
先日はTBありがとうございました。Gudouさんの「考察:日本国憲法と国民投票法案」拝読させていただきました。難しい憲法問題を理路整然と解説されていて感服いたしました。
私のような感でモノを言う人間と違い緻密な頭脳を持たれているのですね。仰られていることは全面的に賛成です。ただ、感でモノを言う私の感が言うのですが、どんなに優れた理論も世論に支持されなければ何の意味もないと。
all or nothingではなく、「戦争放棄と国際紛争の解決を武力に頼らない」と言う趣旨を生かして尚且つ万人に指示される方法はないものかと常々思っております。

2007/03/13 17:35
追伸:アセアセ・・・誤字がありました。上記文中に「感」とあるのは「勘」の間違いでした。
ウエブリブログのコメントって編集できないのですね。後の祭りでした。(笑

2007/03/14 07:57
風さんコメントありがとうございます。ここにお答を書き始めましたが、枠が足りそうにありませんので新たな記事に致しました。どうかそちらをご覧ください。
Gudou
2007/04/29 22:59

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